一億円を拾った大貫さん
きのうの箕面ハイキングの疲れが残り、身体がだるい。こんな日のつまみ読みにピッタリなのが武田百合子『日日雑記』(中央公論社)。
一億円を拾った大貫さんが、久しぶりにテレビに出た。大貫さんの家には、大貫さんの家にはありそうだなと納得がいくもの(大貫さんが好きなもの飾りそうなもの)が、全部飾ってあった。例えば、イタリア産の酒(藁のハカマをはいている。空瓶)。大理石風のテーブル。革風のソファー。金色の位牌。魚拓。私は何故か、よその家に行って魚拓が飾ってあるのを見ると、その家の主人がいい人のような気がする。と同時に、ちょっと、がっくりとなる。
大貫さんは相変らず元気だった。変わってなかった。その後、十万円拾ったそうだ。落ちているものは見過ごすことが出来ない、と自身の性分を朗らかに語る。きゅうりが一杯詰ったダンボール箱、風にひらひら舞ってきた千円札、ネクタイピン、腕時計、も拾ったそうだ。バレンタインの日には、チョコレートのセット一箱を拾ったこともあるそうだ。
こんな一節を読むと、むくむく元気が出てくる。
初出のマリ・クレール連載、単行本、文庫本、何度読み返したことか。