古本に挟みコミあり
堀江敏幸『正弦曲線』を読みおえた。堀江さんの文章を読んでいると、身のまわりの空気が少し涼しくなったように感じる。いったい何がそうさせるのか。
この本の最後の方に、以前に公園のベンチで古本のペーパーバックを読んでいるとき、急に雨が降ってきて、ちょうどその時に膝の上に落ちてきた銀杏の葉を、栞代わりにした。そして後年、その栞代わりにした枯葉が、思いがけず出てきた、という話がある。
ぼくは本に物を挟むことはあまりないが、まめに古本を買っていると、わりとよく物が挟まっていることがある。
以前、ブックオフで文庫本の出物があり、まとめて10冊ほど買って帰り、家でほくそ笑みながらパラパラしていると、ほとんどの本にマクドナルド某駅前店のレシートが挟まっていたことがある。日付はすべて違っていた。
これらの本を手放した人は、本屋で自分の好きな文庫本を買い、その足でマクドナルドへゆき、いそいそと読んだのだろう。それが仕事を終えた後の憩いの時なのか、それとも仕事をサボっての読書だったのかは定かではない。しかし、その人にとってその時が、かけがえのないひと時だったことは間違いない、と思う。
と、こんな勝手な想像をふくらませられるだけでも、古本は楽しい。
- 作者: 堀江敏幸
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/09
- メディア: 単行本
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