読了
吉行淳之介編『酒中日記』
吉行淳之介、北杜夫、開高健、安岡章太郎、瀬戸内晴美、遠藤周作、阿川弘之、結城昌治、近藤啓太郎、生島治郎、水上勉、五木寛之、山田風太郎、黒岩重吾、笹沢左保、野坂昭如、長部日出雄、陳舜臣、田中小実昌、田辺聖子、渡辺淳一、星新一、井上ひさし、丸谷才一、山口瞳、色川武大、阿刀田高、半村良、宮尾登美子、筒井康隆、山田詠美、吉村昭の32名による酒にまつわるエッセイ集。
それぞれの酒日記が微妙に関連しあっており面白い。文壇日記としての側面もあり。
吉村昭「良き人良き酒」より
某月某日
朝食時に、ビール、と言うと、妻は不審そうな顔をした。私が夜以外に酒を飲まないのを知っているからである。
私は、二年前から取り組んでいた書下ろし長編を脱稿した後、新年号の文芸誌二誌にそれぞれ短編小説を書き終え、これで今年の仕事はすべて終えたからだ、と言った。妻は、それはよかったわね、と言い、ビール瓶を私の前に置いてくれた。なんともうまいビールで、食事を終えた後、再びベッドにもぐりこんだ。