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―にとべさん―

 

残暑ホラー申し上げます

夏の暑い時期、ウチは玄関のドアにゴム製のストッパーを挿み、隙間をあけて風通しをよくしている。

今朝、玄関のドアの向こうから呼ぶ声がするので行ってみると、こぎれいな服装の女性が立っていた。ボクが「どういったご用件ですか?」と尋ねると、「いま、あちらから歩いてきましたらね。このドアが閉まらなくなってしまって……」と、ドアを指差し、意味不明なことを言う。

ボク「いや、これは閉まらないようにしてますから」
女性「そうですか。これでよろしんですか」
ボク「はい」
女性「どうも申し訳ありませんでした。そしたら、このドアはどうすればよろしいでしょうか……?」


この時点で、この人はちょっとおかしいな、と感じ始める。


ボク「いや、このままで結構ですよ」
女性「ああ、そうですか。このままで……。で、わたしはどちらの方向に行けばいいのでしょうか?」
ボク「左の方に行ってもらったら、エレベーターがありますから」
女性「あ、そうですか。ほんとに申し訳ありません」


その女性、立ち去るのかと思えば、ふたたび戻ってきて


女性「申し訳ありませんでした。このドアは、このままでよろしいのですか?」
ボク「いや、このままで結局ですから」

このような問答を数回続けた後、ようやく立ち去ってくれた。最初は新手のセールスかと思ったけど、そうじゃなかったみたい。


いやー、夏の終わりにふさわしい(?)、ちょっとホラーな出来事だった。