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―にとべさん―

 

ないしょ

先週末に『伊藤茂次詩集 ないしょ』が金沢の龜鳴屋から届いた。さっそく封筒から取り出してパラフィン紙をかけ、鞄の中に忍びこませ、毎日ちびちび舐めるように読んでいる。

すべてが、というわけではないが、何気ない言葉がビシビシと心に突き刺さってくる。外見も含めて、すごく素晴らしい詩集だ。ゆっくり読んでいこう。

女房には僕といっしょになる前に男がいたのであるが
僕といっしょになってから
その男をないしょにした
僕にないしょで
ないしょの男とときどき逢っていた
ないしょの手紙なども来てないしょの所へもいっていた
僕はそのないしょにいらいらしたり
女房をなぐったりした
女房は病気で入院したら
医者は女房にないしょでガンだといった
僕はないしょで泣き
ないしょで覚悟を決めて
うろうろした
……(後略)

                       「ないしょ」