伯父のこと

先月末、伯父が亡くなった。この伯父は母のひとつ上の兄で、甥であるぼくのことを大変かわいがってくれ、いろんなところへ遊びに連れて行ってくれた。

一番印象に残っているのは、大相撲の大阪場所に連れていってもらったこと。小学生の頃、ぼくは大相撲が大好きで、それを知った伯父が茶屋でチケットを取り、ぼくを連れて行ってくれた。かなり良い席だった記憶がある。

伯父は、数年前から患い、大きな手術もし、けっして元気だとは云えない状態だった。しかし、４月に入ったくらいから、家族も驚くほどの回復ぶりで、ひとりで床屋に行ったり、散歩したりと、見違えるほど元気に暮らしていたらしい。

ところが亡くなる数日前、ひとりで行った病院の待合室で急に具合が悪くなり、そのまま回復することなく逝ってしまった。

人は、いま食べているのが最後の食事だとか、この人と話すのはこれが最後になるとか、床屋に来るのもこれで最後だとか、そういうことを感じるものなのだろうか……。何も思い残すことのないような、おだやかに眠る伯父の顔をみて、そんなことを考えた。

ほんとうにおだやかな表情だった。