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―にとべさん―

 

冷めた紅茶

春は、色々なことがからみ合い、疲れる季節。


夜、家族が寝しずまったあと、コタツにもぐり込み、大きくため息をひとつつく。

小山清全集』をひらき、「落穂拾い」「朴歯の下駄」「桜林」の三篇を読む。‘誰かに贈りものをするような心で’書かれたその言葉は、折れそうな心に深くしみる。



この『小山清全集』を買うきっかけとなったのが、坪内祐三氏のエッセイだったことを思い出し、本棚から『雑読系』(晶文社)を出してくる。その横に並ぶ『四百字十一枚』(みすず書房)も一緒にコタツのうえに置く。


ティーパックの紅茶をいれ、『雑読系』の「新しい『小山清全集』が送られてきた」を読む。

続けて、「久保田二郎の久し振りの「新刊」」、「「肖像」でもあり「私小説」でもあり「自伝」でもある傑作」、「下鴨北園町九十三番地」、「黒田三郎の「言葉」を読んでいる」、「送られてくることがわかっていながら買ってしまった雑誌」を読む。

『四百字十一枚』から「伝説の古書店についての、しかも孫が書いた、本が出た」、「少し昔の東京食べ物屋ガイドを、文字通り「雑読」している」、「月の輪書林からもらった二冊のオマケ」、「高橋英夫の読書エッセイ集の最新刊」、「谷沢永一の『紙つぶて』「自作自注最終版」の刊行に寄せて」、「十年前に私は、タヌキの置き物の飾ってある定食屋で岡崎武志と昼食を共にした」など、気になるタイトルの文章をつまみ読みする。


芋づる式に、まさに時間を忘れる読書をしていたら、さっきいれた紅茶が冷たくなっていた。



すっかり忘れていたけれど、この朝日新聞社の雑誌で連載されていた「雑読系」シリーズの二作は、それぞれ違う、それでいて然るべき出版社から出されていたんだなあ。


そんなことを考えながら、自分の好きな本を手もとに置いておくことの幸せを、かみしめながら布団にもぐりこむ。